
第7回
資源を巡る最近の動向 ~ ライフサイクル視点が欠かせない ~
いよいよ問われ始めた「製品の循環性能」
「サーキュラリティ」を知っているだろうか。英語ではCircularityと表記、最近では「循環性、循環できる能力」と定義される。2024年5月22日、国際規格「ISO 59020:2024」(循環性パフォーマンスの測定と評価))を含む循環経済関連3規格が相次いで制定された。
サーキュラーエコノミー(循環経済)は、EUが2015年に政策公表したことで世界的に広まった概念だ。従来の【製造➤使用➤廃棄】の一方通行(リニア)でなく「捨てるという概念を捨てる」とする循環(サーキュラー)を前提にした新しい経済システムだ。
ISO化を機に、取引先から届く「CSRアンケート」等の設問にも「サーキュラリティ」が登場している。仮に取引先から「あなたの会社の製品のサーキュラリティは?」と問われて準備する答えは「再生可能原料由来の割合」「業界平均と比較した製品の寿命」「再生可能エネルギーの割合」「水の循環使用率」などが想定される。
30年ぶりに「ゼロエミ旋風」到来か
これと似た話が今から30年前の日本であった。国連大学(本部:東京渋谷区)の学長顧問だったグンター・パウリ氏が1994年「ゼロエミッション」(筆者は推進事務の一員)を提唱。ある産業で排出される廃棄物を別の産業で原料とすることで社会全体で廃棄物をゼロにするという考え方だ。当時は産業界でゼロエミ旋風が巻き起こった。
ゼロエミとサーキュラー、この二つは一見似ている。何が違うのか。前者は「廃棄物を次の産業の原料とする循環」だが、後者は「製品の設計段階から考える循環」だ。デザイン視点からのアプローチが目新しい。なお現在「ゼロエミッション」はCO2排出ゼロの文脈で使用されている。
目先のエコではなく循環視点で主張せよ!
サステナビリティ研修の場で講師として気になるのは、日本の受講者は「リサイクル」と聞くと単純に「環境にいい」と思い込んでいる点だ。「循環」ならなおさらプラス評価だ。しかし「資源循環」が「経済合理性を生む」事例は未だ少ない。つまり循環させた分だけCO2排出や環境負荷は増加する、間違いなくコストもかさむ。
しかしLCAを使うとそうとも言えないことが分かる。LCAとは「ライフサイクルアセスメント」のこと、原料採取から調達、製造、流通、使用、最終廃棄にいたるまでの製品の全過程(ライフサイクル)における環境負荷を総合評価する手法だ。EV車を例にとると、走行時はCO2を出さないが、製造時はガソリン車の倍の負荷がかかり、充電する電力は化石燃料由来…となるとライフサイクル又は循環視点で見た時、エコカーが本当にエコか一概には言えなくなる。
外食産業でストローをプラ製から紙製に変更する動きがあった。ある大学が行った比較調査では紙への代替は「CO2は確かに減る」が、反面「木材消費に関わる土地利用や紙製造に関わる水資源消費といった項目は相対的に増大する」そうで「単に紙に代替すれば問題を解決できる訳ではない」と結論づけている。要はエコか否かは絶対的ではなく相対的なものなのだ。
かといって全ての活動でLCAを適用することは現実的ではない。そこで今後は自社が環境について表明する時は、常に「ライフサイクルや循環性能の視点」を持って主張することが不可欠なのだ。