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第6回
環境の労働安全衛生の内部監査を考える

株式会社オフィスグラビティー/JMA主任講師中川 優

環境×労働安全衛生がトレンド

2024年は複数の日本企業で、環境と労働安全衛生の合同監査を実施するする動きがあった。ここで言う「合同監査」とはISO14001(環境マネジメントシステム)の監査チームとISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)の監査チームが合同して、内部監査活動を行うことだ。

意外に思うかもしれないが日本では、環境と安全の協働作業は多くの事例がある訳ではない。その理由は、環境と労働安全衛生においては、それぞれ国内の法体系がしっかりと確立されている点が挙げられる。法対応する組織がそもそも存在する訳で、内部監査や法対応を主導する責任者が異なるのだ。

安全の方が歴史は古く、1916年(大正5年)労働安全衛生法の前身である、「労働者の健康を保護するための工場法」で労働安全委員会の設置が義務付けられた。一方の環境の方は、1970年代の当時社会問題となっていた公害問題に端を発している。労働安全衛生は法律ではだいぶ先輩だ。

地球サミットの環境とSDGsの労働安全衛生

一方国際規格化の方では、ISO14001は1996年、ISO45001は2018年にそれぞれ初版が発行された。この逆転現象の背景は1992年6月リオデジャネイロで開催された「地球サミット」で、その中核的な理念である「持続可能な開発(Sustainable Development)」が打ち出され、その具体策としてISO14001の開発がセンセーショナルに始まった。当時欧州の課題は環境問題だったからだ。

ところが、今度は2015年1月にSDGsが世に出ると、17ゴールの半分が「人に関わるテーマ」となり、さらに新型コロナ禍による「健康重視」の世界的な潮流により、安全に軸足が移った感がある。その証拠に2000年当時によく使われた「環境経営」というキーワードも、いまでは「健康経営」の方をより耳にする。同等の文脈として「ウェルビーイング」も目にするようになった。「ウェルビーイング」とは「Well(よい)+Being「状態」のことであり「健康、福祉又は幸福」のことと理解されている。

社外は環境、社内は労働安全衛生

例えば、化学物質の管理という事業活動で見た場合、環境にも安全にも関係する。また社内の運用や管理方法も大差はない。違いは、法的な見地から原則論を述べるなら、敷地外に影響が及ぶ場合は環境問題、社内の従業員などに影響する場合は労働安全衛生の問題となる。この両方に関わる可能性が高いことも少なくない。特に化学メーカーでは「レスポンシブ・ケア」という取り組みも普及している。

日本企業のマネジメントシステムについては環境と品質の統合をする企業が多い。その理由は、日本の製造業の生産管理の対象は「QCD」(品質:Quality、コスト:Cost、納期:Delivery)とされている。そこにE(環境:Environment)を追加して「QCD+E」と捉えることはむしろ自然だったかもしれない。特に公害問題で鍛えられた日本の製造業では違和感のない関係だろう。しかし欧米では既に環境と安全の統合が進んでおり、EHS (Environment, Health, and Safety、米国)又はHSE (Health, Safety, and Environment、EU)と表現されている。今回の環境と安全の統合の件、健康という人の側面に注目すると、「地域住民の健康」が環境で、「従業員の健康・労災」が労働安全衛生と言い換えることができる。

ところで2030年以降の「ポストSDGs(持続可能な開発目標)」が話題に上がりだしている。予想の域を出ないが、次は「持続可能なウェルビーイング目標(SWGs)」とも噂されている。そうなれば、日本でも環境と労働安全衛生の統合は加速するだろう。

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